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心躍る夜色

2020年12月29日読みもの

昨年まではこんな様子も見受けられました、

来年はどんな1年になるのでしょうか。

気持ちは前向きでいきたいですね。

 

 

「仕事納め、お疲れ様~!」

 

ジョッキをぶつけ合い、

ビールを流し込むと自然と笑顔が零れる。

 

 

年末の最終出社日、いつまでいても良いという会社の

納会を早々に抜け出して、私は小走りに駅の方へ向かった。

電車に乗り2駅、大きなターミナル駅の改札に向かうと、

既に見慣れた姿がスマートフォンを見つめながら立っていた。

 

「お待たせ!」

 

声をかけると、少し赤くなった頬と鼻に

満面の笑みを宿した友人は「お疲れさま~」と

ねぎらいの言葉をかけてくれた。

 

同じ日が仕事納めだったので、二人で飲みに行くことになり、

この駅で待ち合わせていたのだ。

 

クリスマスが過ぎ、どこもかしこも忘年会ムードで

溢れている街中では、

女二人が居酒屋でジョッキのビールを飲み干しても、

誰も憐みの視線を向けることはない。

数日前ならばきっと「ああ、彼氏もいない可哀そうな女性…」

と思われたであろう。

 

そんなことはどうだって良いのだが、

こうして誰の目を気にするでもなく気の置けない

友人と飲むのは何よりも楽しかった。

 

めいめい好きなものを注文し、食べて飲んで話を弾ませる。

最初の一杯はやはりビールだが、寒いこの季節には

焼酎のお湯割りが飲みたくなるもので、

私は店員さんに焼酎を注文した。

 

「いくねぇ」

 

友人はお洒落なカクテルを傾けながらニヤニヤしている。

 

「最近はまってるんだよね」

 

そう言って私もニヤリと笑い返す。

こういう、肩ひじ張らない気軽な付き合いが心地よい。

 

テーブルに運ばれた焼酎を見て、私は思わず歓声を上げた。

 

「わ!お洒落!」

 

少し変わった形の可愛らしい酒器に入って運ばれた焼酎は、

なんだかご褒美のように見えて、幸せな気持ちにしてくれた。

 

「いいなぁこれ…」

 

そんなことを言いながらゆっくりと焼酎をすすると、

お腹の中から温まるようにじんわりと酒の旨味が広がった。

 

今年1年を振り返り、色んなことがあったけれど、

二人とも良い出会いがなくて困ったもんだ、

という話で盛り上がった。

 

本当は大して困ってもいないのだが、

年齢的にもそろそろ両親が心配しだすお年頃だし、

来年こそは何か良いことがあると良いね、

などという話を交わした。

 

「じゃ、今年はイルミネーションデートとかもしてないってことだよね?」

 

ふいにそう聞かれて「うん」と答えると、友人が前のめりに

 

「めっちゃ見に行きたいイルミネーションあるんだけど、

これから一緒に行かない?」

 

と誘って来た。

 

 

 

「え!?今から!?」

 

「うん、いいじゃん、だったもう仕事ないしさ、

明日休みでしょ?行こうよ、まだ点灯してるはずだから!」

 

半ば強引に友人に店から連れ出され、

私は彼女と二人で真冬の夜道を歩いた。

 

焼酎の温かさがまだ体の中に残っていて、

ほろ酔い気分で冷たい夜風が心地よく、

歩きながらの会話も弾み、とても楽しかった。

 

友人が連れて行ってくれたところは、

話題になっているという最新のLEDライトを

ふんだんに使ったイルミネーションスポットだった。

 

「わぁお…!」

 

思わず声が漏れる。

酔いが少し冷めたような気がした。

 

「キレイ…!」

 

色とりどりの光が時間の流れに乗り

カラフルに表情を変えていく。

 

温かい暖色系の色でほっこりとするような

色合いかと思えば、幻想的な真っ青な光に変貌し、

いつまで見ていても飽きなかった。

 

「彼氏と来るべきだねぇ…」

 

そんなことを呟きながらも、

今隣にいる大切な友人と一緒にこの時とこの空間を

共有できていることがすごく嬉しかった。

 

「ずっと来たかったから、今日一緒に来れて良かったよ」

 

友人は満足そうに笑った。

 

居酒屋を出たのがかなり早い時間だったので、

まだ街中は賑わっていて、デパートや商店も開いていた。

ずっとイルミネーションを見ていた

私たちの体は冷え切っていたので、

暖房がガンガンに効いている商業施設に

避難することにした。

 

街中も美しいイルミネーションや

ライトアップでカラフルに彩られていた。

クリスマスのイメージが強かったが、

最近は冬が終わる頃まで光の色を楽しむことができるようだ。

 

「年末ってかんじしないなぁ」

 

そう言いながらも、デパートに駆けこむと、

目の前に雑貨屋さんが飛び込んできた。

何の気なく足を踏み入れてみると、

なんと、あの居酒屋で見かけた酒器によく似た

色合いの一輪挿しを見つけた。

 

 

「これ、さっきめっちゃ良いって言ってたやつに似てるね」

 

友人も気付いたようだった。

 

「うん、これこれ。一輪挿しかぁ」

 

「いいんじゃん?生活に潤いが出るかもよ?」

 

友人はふざけて言ったようだが、

私は「たしかに…」と妙に納得してしまった。

 

「今年1年の、自分へのご褒美かな」

 

そう言って私は陶器でできた可愛らしい一輪挿しを手に、

レジへと向かった。