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<虹の写真>~前編~ 読みもの

2020年7月16日読みもの

今日は7月16日(ナナイロの日)だそうです!

それにちなんで今回のテーマは

<虹の写真>です

 

~前編~

 

「いや、ないない。

それはないんだよ。分かる。

ぜっっったいに、ない」

 

そう言いながら、

いつも胸の奥がキュッと
鋭いのか鈍いのか

分からない

痛みを感じていた。

 

アイツが、私のことを

恋愛対象として

見ていないのは、

私が一番よく分かっていた。

 

アイツは、そういう奴なんだ。

 

大学のサークルで

出会ったアイツは、

なぜかモテた。

 

たいして顔が良いわけでもないし、

頭が良いわけでもないし、

 

アイツを好きになった

ことのない女からすれば、

 

なぜモテるのか

さっぱり分からないだろう、

と思う。

 

でも私には

アイツがモテる理由も、

アイツが私のことを

”そういう目”で

見ていないことも、分かった。

 

アイツはずるい。

 

勘違いさせるのが

天才的に上手い。

 

いわゆる”母性本能”を

くすぐるタイプなのだ。

 

「私を必要としてくれる」とか

 

「私がついていないと
ダメなんだ」とか

 

そう思わせてしまうんだ。

 

私もそれで、
一瞬コロリといきかけた。

 

アイツは何かと

私を頼ってくる。

 

サークルの用事に

付き合ってほしいとか、

朝起きる自信が無いから

モーニングコール

してほしいとか、

 

それだけならまだしも、

真剣に悩み相談を

されたことも

何度もあった。

 

それで私は

恋に落ちかけた。

 

でも、

そんな私を尻目に、

アイツは次々と

彼女を作っては別れた。

 

彼女ができてもアイツは

私に連絡してきた。

 

私はそのたびに

「ちゃんと彼女と
デートしてんの?」とか

「彼女のこと
ほっといちゃダメだよ」とか、

 

そんな小言を吐きながも、

アイツの連絡を

待っている自分に気付いていた。

 

彼女がいる時の

アイツの連絡は、

用がある時だけなのに、

 

彼女と別れると、

私に無意味なメールを

送ってくることもあった。

 

それは
「疲れた~」や

「おはよ~」など、

他愛もないひと言だったり

 

「見てこれ、超キレイじゃね?」

というコメントつきの

夜景の写真だったり、

 

まるで彼氏が彼女に

送るようなものだった。

 

旅行先のお店から

「これとこれ
どっちが良いと思う?」と、

陶器の酒器だかコップだかの

写真を送ってきたこともあった。

 

冗談で
「私へのお土産選びかな?」

と返すと、律義にも

その店で売っていたという

可愛らしいピアスを

買ってきてくれた。

 

こういうところが、

本当にズルい。

 

そんなやりとりを見て、

私の周りの友人たちは

「絶対あんたのこと好きじゃん」

と言うのだが、

 

私はいつも

「ない、ない」と

受け流すのだった。

 

その度に胸の奥が

キュッと痛くなるのを自覚して、

それが何を意味するのか、

必死に考えないようにして。

 

そんな日々を送る中、

今でも忘れられない

写真をアイツが

送ってきたことがあった。

 

それは虹の写真。

見事な虹だった。

 

我が家で飼っていた犬が

天国に旅立った時に

私が落ち込んでいた、

 

そんなタイミングだった。

 

アイツは、

私宛に虹の写真を

送ってきたのだ。

 

 

そこには愛犬を失くした

私への気遣いの言葉が

並べられていた。

 

思わず涙が溢れて、

私はひとり、画面を見て

「バカたれ」と呟いた。

 

~後編へ続く~

(次回投稿をお楽しみに)