<梅雨の窓辺>前編 読みもの
<梅雨の窓辺> 前編
夏のように暑い日が続き
冬物の衣類を閉まって衣替えをして
暖房から冷房に切り替えて、
サンダルを引っ張り出して
冷凍庫にアイスのストックを補充する。
そんな5月の中旬ごろを
過ごしていると
突然気圧が下がって
暗雲が空を覆い雨が降り出す。
梅雨がこんなにどんよりと
寒々しいものだったというのを
毎年肌で実感するまで
忘れているのが不思議だが、
この時期が到来すると
慌ててしまい込んだ
カーディガン
長袖のスウェットなどを
引っ張り出してくるのだ。
夏は目の前まで迫っているが、
その前にこの梅雨を
やり過ごさなければならない。
毎日少しずつ日が
伸びていくはずなのに
なぜか夕暮れ時が長く感じる。
日の入り時間は遅くなるのに、
3時ぐらいになるともう暗くなり始める。
それから日が沈んで
夜になるまでの数時間、
薄暗い時間がずっと続くのだ。
長い長い夕暮れ時が、
どこか不安な気持ちにさせる。
そんな梅雨には、
一旦夏を忘れて
温かいものを求めてしまう。
私は、窓の外に広がる灰色の
景色を眺めて今日もしとしとと
雨が降っているのを確認し、
窓を少しだけ開けた。
冷たくどんよりとした空気が
頬を撫でる。ああ、今日も
こんな天気か、と気分が沈む。
そうして私は小鍋を取り出して
ミルクティーを作る。
ミルクと茶葉を入れてゆっくりと、
煮立たせないように
気を付けて温めてい。
少しだけ鍋から目を離して
食器棚に大切にしまったコロンとした
陶器のカップを取り出し、
ミルクの色が優しいベージュに
変わるのを待つ。
出来上がったミルクティーを
カップに注い
雨降りの窓辺に腰掛ける。
ミルクティーは、
直接ミルクで煮出した方が好みだ。
こっくりとまろやかな仕上がりになる。
梅雨の陰鬱とした気持ちを
優しくほぐしてリラックス
させてくれる。
私はカップを両手で包むように持ち、
ミルクティーを味わった。
手のひらからも温かさが伝わる。
陶器のゴツゴツとした厚みが、
熱をちょうどよく伝えて、
じんわりと温かい。
身体の中にも
ミルクティーの温かさが広がり、
ほうっとひとつ息を吐く。
このまま目を閉じたら
眠ってしまいそうだけれど、
今日はまだやることがある。
私はミルクティーを飲み干して、
パソコンを立ち上げた。
~後編へつづく~
(次回投稿をお楽しみに)